2022.12 主のご降誕おめでとうございます。 主任司祭 飯野 耕太郎

 コロナ感染症拡大から2年と10カ月、まだ続いています。その間、ロシアのウクライナ侵攻という事態が起こり、現在も戦争が継続中。核の脅威の中、毎日、たくさんの人が亡くなっています。そして、世界には国民を弾圧している国が複数あります。如何に多くの人が正義と平和を希求している事か。そんな中で迎える降誕祭。戦時中、クリスマスを迎えた、サレジオ会のK神父様がその時の情景を小冊子の中に記しておられました。少し紹介します。
「灯火管制」の中、聖堂の窓を光が漏れないように黒布で覆い、夜中の12時、グレゴリアンのミサが始まったといいます。天空には、神の栄光を歌う天使たちの声と競い合って、B29の爆撃機が飛んでいます。説教は「平和」についてです。戦争と平和を同時に体験したそうです。戦争を挑む人間がいて、その横に人間となって人間を救おうとする神がいた。これは矛盾なのか。実に、キリストは私たちの平和ですと。このクリスマスのミサを一生忘れることはないと。書いておられました。
 今、苦しんでおられる人々、悲しみの中におられる人々、絶望の中で立ち上がれなくなっている人々、これらの人々のためにイエス様はこの世に誕生してくださいました。キリストの平和の光がこれらの人々の心に灯されますように、願い祈りたいです。
 イエス様は、この世にいと小さき者として誕生してくれました。そこで命の誕生ということを少し考えてみました。人類の始まりをたどっていくと20万年ほど前にアフリカで生まれた少数の人たちにたどりつくそうです。ホモサピエンスと言われる人々です。ホモサピエンスがチンパンジーから分かれるところに何らかの働きがあったのでしょう。そこに神様の働きを見ることができるのではないかと思います。祖先をこうしてずっとたどっていくと、38億年も前の大昔に生まれた一個の細胞にたどりつくと言います。
そして、海の中でこの細胞は生まれました。命の始まりです。 地球上の生きとし生けるものはこの38億年前の一個の細胞から生まれたらしいのです。そう考えると地球上の生き物は皆、仲間といえます。また、人間の命の始まりは一個の細胞、受精卵です。細胞は体をつくる一番小さい単位です。誕生の際には3兆個もの細胞になっていると言います。また、精子が卵子にたどり着くまでの距離は人間が太平洋を泳ぐ距離に匹敵すると言います。 仮に日本列島の東海岸に1億人が、横一列に並んで、一斉に海に飛びこんだとします。アメリカ西海岸に向かって泳ぎ、一人だけがたどり着き卵子に遭遇できたという話です。それが私の命、あなたの命だとしたら、それはまさに奇跡だといえるでしょう。命の誕生はまさに奇跡の誕生といえます。
 イエス様は、この命をどのように用いたら生き生きできるかを教えてくれました。泊まる場所がなく飼い葉おけに寝かされたイエス様。自分は食べられる為に生まれてきたことをシンボル的に示してくれています。つまり自分を他者に提供していくこと、自分の能力、時間、体力、お金等々を、自分のためばかりではなく、他者に分かち合う時、命は輝くことを教えてくれています。私たちの命は互いに生かし合うため、助け合うために用いていくべきなのです。地球上の生きものは皆、仲間なのですから。まさにキリストは私たちの平和です。この平和が私たちの心にしっかりと生まれ根付きますように。教皇フランシスコは、神が人間の幸せを願う親のような存在であることを強調しています。「神は、責任を感じています。わたしたちの幸せを望み、わたしたちが幸福で、喜びと平和に満たされているのを見たいのです」と。いただいている命を神の望まれる方向に用いてまいりましょう。一日も早い戦争の終結を願って。「朝が来てまた朝が来る平和かな」。

2022年12月03日